平川恒太『死の島(続)』
会期:2018年11月6日(火)~12月21日(金) 12:00~18:30
休廊:土曜・日曜・祝日(11/10、11/17、12/1、12/15 の土曜はオープンします)
Opening Reception:2018年11月10日(土)17:00~20:00
*音楽グループ『L’alluer』によるラフマニノフの死の島をアレンジした演奏を15分程行う予定です。
この度、un petite GARAGEでは、平川恒太の個展『死の島(続)』を開催いたします。
平川は、現在森美術館で開催中の15周年記念展「カタストロフと美術のちから展」にも最年少作家として参加している注目の若手作家です。
本作はアルノルト・ベックリン(1827-1901)による「死の島」と、1976年の福永武彦による小説「死の島」に由来します。
戦後の広島を舞台に平和、命、そして愛について問う本小説に、平川は福島第一原子力発電所を重ねました。
日本の原発問題は今も解決することなく、私達の身近に存在しています。
平川はこうした目を背けがちな社会問題に絵画を通して向き合い、私たちに語りかけてくれます。
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平川 恒太より
本展の個展タイトルになっている「死の島」はアルノルト・ベックリンによって 1880 年から 1886 年の間に繰り返し描かれた作品のタイトルです。アルノルト・ベックリンの「死の島」は 文学や音楽、演劇等これまで多くの芸術家によって翻案されてきました。福永武彦による著作 「死の島」(1976 )もその一つです。上下巻からなる本作は、広島で被爆し心と体に深い傷を負った芸術家・萌木素子が描いた『島』という作品に惹かれ出会った出版社に務める相馬鼎と萌木 素子と共に暮らす美しい年上の相見綾子の3人を描いた長編小説です。戦後の広島を舞台に、平和とは何か・生きるとは何か・愛とは何か・などを描く本作品に福島第一原子力発電所事故を重ね、原爆の図を制作した故丸木位里・俊夫妻が生前に語った「平和になった時、原子爆弾は原子力発電所に化けて出ました。エネルギー平和利用の名のもとで、放射能がばらまかれているのです」という言葉を思い出しました。日本人は何度もの放射能による喪の歴史の中で何を学び、どう歩んできたのでしょうか。そしてこれから、どのような世界に向かっていくのでしょ うか。タイトルの“死の島(続)”とは福永武彦が書いた世界の続きであり、これからも考え続けなければならない私たちの未来への祈りが込められています。
山口 裕美より(YY ARTS CEO・アートプロデューサー)
平川恒太はこのところ引っ張りだこだ。その理由はいくつか考えられるが、まずは作品の傾向をシリーズ化しつつある点がある。まずは黒い絵画シリーズ。この作品は戦争画や東日本大震災といった大きな社会的傷に対しての現代的アプローチであり、批評でもあるシリーズで、黒色のグラデーションを使いながら、黒い下地に黒い絵の具で描くもので、現在、開催中の「カタストロフと美術のちから」展(森美術館)に参加している作品「Black color timer」が代表作の1つである。また茶会シリーズがあり、こちらは昨年開催された「かけがわ茶エンナーレ」の折に新作として発表してくれた「森の茶会」という非常に牧歌的森の絵画であり、そのコンセプトには日本の伝統的な茶会での一期一会や刀を預けて躙り口から入る、茶会の席での平等感などが含まれている。また、もう1つは「どこから来たか、どこへ行く」のシリーズがあって、このシリーズではロマン派の名画や平川自身が気になる作品に対しての考察のもと、制作されている。
今回の展覧会では新しいシリーズとなるアーノルド・ベックリン作「死の島」の新作を展示することになった。ベックリンの「死の島」は 5点作品があることで知られ(1点は行方不明)、20世紀半ばのベルリンでは知らない人はいないほどの有名な絵画作品だ。今回、平川恒太は東日本大震災と福島原発事故や身近に感じられるさまざまな出来事を「死の島」の構造と構成を踏襲しながら、オリジナルのメッセージを盛り込んでいる。平川版「死の島」も4点だけとなった。「死の島」はけっして不吉な絵画ではない。むしろメメントモリ的な伝統を踏まえた、今、ある小さな幸せを感じつつ見る絵画である。
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・作家紹介
平川恒太/Kota Hirakawa
WEBサイト:http://hirakawa-studio.sub.jp
1987 埼玉県在住
2006 埼玉県立大宮光陵高等学校美術科 修了
2011 多摩美術大学 美術学部 絵画学科 油画専攻 卒業
2013 東京芸術大学 絵画専攻 修士課程修了
2014 ~2015 State Academy of Fine Arts Stuttgart/Guest Student
【主な受賞】
2015 「TERRADA ART AWARD2015」諏訪敦 賞
2013 「アートアワードトーキョー丸の内2013」三菱地所賞
「損保ジャパン美術賞展 FACE2013」審査員特別賞
2012 「ターナーゴールデンコンペティション2012」グランプリ
2011 福沢一郎賞
2009 「ターナーゴールデンコンペティション2009」優秀賞
2008 「VIA ART2008」EFD KURATA賞
【主な展示】
個展
2018 「何光年も旅した星々の光は私たちの記憶を繋ぎ星座を描く」ギャラリーアトス、沖縄
「悪のボルテージが上昇するか21世紀」福沢一郎記念館、東京
「カタストロフと美術のちから展」森美術館 東京
2016 「Between」un petit GARAGE、東京
2014 「儚き絵画の夢」 Bambinart Gallery、東京
「Trinitite-レキシノダンソウ、カイガノダンソウ」 丸ビル 7F、東京
2013 「水のゆくえ」TURNER GALLERY、東京
「Trinitite-けいしょうされぬ記憶と形」Bambinart Gallery、東京
2012 「ART FAIR TOKYO 2012」東京国際フォーラム・東京
2011 「豊かな絵画と豊かな世界」Bambinart Galler、東京
「FOXのちから」Bambinart Gallery、東京
「ANA MEETS ART」 羽田空港ラウンジ、東京
2010 「The Neverending Story -Hirakawa Kota Solo Exhibition」原爆の図 丸木美術館、埼玉
平川恒太『考え・ない』 Turner Gallery、東京
【コレクション】
2011 ピゴッツィ・コレクション
2013 三菱地所/Trinitite- アッツ島玉砕
2013 前澤友作コレクション
un petit GARAGE
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最寄り駅:日比谷線東銀座駅6番出口から徒歩4分